永遠の出口

2006年9月13日 読書
ISBN:4087460118 文庫 森 絵都 集英社 2006/02/17 ¥580

ドラマ「女王の教室」は、この小説の
「黒い魔法とコッペパン」のエピソードからパクったモノらしいという。

そんなきっかけで興味本位で読んでみた。

確かに、これは盗用と噂されてもしかたないか、と思われるほど
台詞、モチーフが重なっている。
というか決定的でしょう。
小説全体としては似ても似つかないが
ここは正直に「女王」の脚本家は「原案」と宣言してしまってはどうか。

まぁ「女王」はさておき
小説自体は面白かった。
主人公・紀子の過ごした小・中・高の時代は
私自身の過ごしたそれとほとんどピッタリ重なっているので
その時代の空気がイタイほど分かる。
まるで自分のイタイ過去をさらされているような
おかしな感覚に襲われてしまうのだ。

主人公が中二のときグレかかるが、
そのきっかけに決定的な理由付け、excusesが存在しないことや
外野のフォローが空しく空回りしていること(おばさんからの手紙)
すべてはどんなことも自分の情けなさが原因であり
それもじゅうぶん自覚していること。

そしてただ

放っておいて欲しいこと。

理由なんか無い

すべてが醜悪に見えて許せないこと。

でも自分の非は棚上げしたいこと。

それらは見事に何にも昇華せずに宙ぶらりんに放り出されている。
そのあくまでドラマティカルな着地点を拒否したリアリズムが心地良い。

すくなくとも、同人まがいのBL的解釈をねらった青春小説よりは、静かに心のなかに不思議な波動を与えてくれる小説だと思う。

オススメ。

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