私は少々癖のある子どもだったので
母にとっては大分扱いにくい存在だったに違いないし、
親子だからと言って、絵に描いたような仲良し母娘という感じでもなかった。
むしろ、かなり冷めた関係だったように思う。

母は一生懸命なひとで、
我慢強く、尊敬できる人だったけど
どうしようもなく矛盾だらけで愚かな所もあった。

(実際、愚かじゃない母なんているんだろうか?)

大人になり、親元を離れ、
少なくとも親の脛をかじってはいないのだと
虚勢を張ることに意地を張っていた時期もあった。

たまに故郷に帰り、一緒に食事をすると
きまって母は食後に
「ソフト(クリーム)たべる?」
「クリームソーダ飲む?」
と奨めてきた。

幼い頃、大家族の世話で多忙だった母の息抜きにつきあって
よくデパートのレストランで飲んだクリームソーダは、
きらきらと輝いて、綺麗で、甘くて、ほんとうに幸せな味がした。

しかし、すでに「大人」になった私は、つい
(もうそんな子どもっぽいものは)
「いらない」
と毎回むげに断っていた。

そんな私の前で、恥ずかしそうにソーダを注文し、
幸せそうに飲んでいた母。
あのとき、一緒に飲んでおけばよかったな。

さようなら。ありがとう。
そして、お疲れ様でした。

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