海猫〈上〉

2004年12月1日 読書
まだ下巻の途中なのに書いちゃいます。

映画化されたということで読んでみました。
わたしの好きな(?)兄弟もの、らしいので…。

ロシア人のクォーターとして生まれ、函館に育った美しい女性・薫が、若くして望まれて昆布漁の村へ嫁ぎ、不慣れな生活の中、夫の愛を受け入れることで自分の存在を確認するが、その仮の幸せも長くは続かなかった…。義弟との禁じられた恋、不義の子の出産を通してほんものの「自分」に目覚めた薫は、家を出る決意をする。

といった内容でしょうか。
舞台は昭和30年代。
父の顔も、愛も知らない、自分のルーツにも確かなものを感じられず、生きている証が欲しくて結婚した薫。
それが間違いだと気付いた時には既に遅く、修羅場のあと、彼女が選んだのは子どもたちの目の前で自らを犠牲にすること…

というと聞こえがいいけれど、もうちょっと女性なら、母なら、
逞しく生きる力を得られなかったんでしょうか。
昭和30年代という、まだまだ女性にとっては厳しい時代というのもありますけれど。
彼女が経験した「結婚生活」は漁村という特殊な世界ではあるけれど、結婚した女性ならだれでも感じる(と思う)「妻」となってしまった女性の、アイデンティティーを失いかける一つの過程だと思う。
「クォーターで美しい」という条件は一般の女性には当てはまらない特殊なものでしょうけれど。

しかし。兄弟で一人の女性を…という設定はありがちですが、
思いを遂げてしまい子どもまでなしてしまうと、やっぱりなんだか不浄だなあとしか思えない。
昔、映画「瀬戸内少年野球団」で、夏目雅子が夫が戦死したため、義両親に義弟との関係を迫られるなんてシーンがあって吐き気を催した覚えがあります。
もし、そんなことが昔当たり前のようにあったことなら、おぞましい限りです。

下巻では、成長した薫の娘たちの物語になっていて、こちらの方が生き生きとした物語になっている。

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